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中野明彦(なかの・あきひこ) 1966年生まれ。89年東京電力入社。企画部などを歩む。2012年ソフトバンクに移り、19年よりSBパワー社長。現在はソフトバンク執行役員も兼務する。16年から電力・ガス取引監視等委員会(制度設計・監視専門会合)オブザーバーも務める。

インタビュー連載「電ゲン論」

 「脱炭素社会」の実現が叫ばれるいま、あらためて「電気」をどうつくるべきなのかが問われています。原発の賛否をはじめ、議論は百出しています。各界の著名人にインタビューし、さまざまな立場から語ってもらいました。

<新電力>

 電力事業はかつて大手電力による「地域独占」だったが、2000年に、大規模工場などを対象とした小売りの自由化が始まり、「新電力」からも電気を買えるようになった。16年には家庭向けも含めて全面的に自由化された。ガスや石油元売り、通信などの異業種が参入したり、大手電力が他の地域に進出したりした。だが、ウクライナ危機による燃料価格の高騰などで、経営を悪化させて撤退する新電力も相次いだ。

電気料金の下げ余地には限界

 電力小売りの全面自由化で、大手電力や新電力を取り巻く環境はどう変わったのか。東京電力にも在籍したキャリアを持ち、新電力のSBパワーの社長を務める中野明彦氏に聞いた。

 ――東電時代から自由化には賛成されていたそうですね。

 「自由化の意義は、消費者の選択肢の拡大であり、この点では成果もあったと思います。様々な料金プランも出てきましたし、私たちのような通信事業者が新しい事業を始める機会も広がりました」

 ――事業者間の競争が起きたことで、電気代は抑えられたのでしょうか。

 「家庭用は(国の認可が必要…

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